2018年04月08日

Nelyubov  「ラブレス」

Nelyubov.jpg2017  

Director:

Andrey Zvyagintsev

“映画史に残る慟哭のクライマックス”。予告編のキャッチコピーを意識して、惑わされ。
前半は、愚かな親たちの行動、現代的な大人の姿を観続け、後半から本題に入り、状況は一変したが、愚かな親の姿は変わらず、捜索平行線のまま、全体を通してかなり時間も経ったので、もう来る、震撼のラストが と。
そういうことか。そういう意味の衝撃。不快で、悲痛、頭から離れなくなるもの。

自己中心の身勝手な両親と、愛されない哀れな子ども。
人間のエゴを通じ、リアリティーがあり、精神的な残酷さが胸に突き刺さる。

捜索中、両親が子どもの名前を呼ぶことは一度もなかった。
後半で、母親の息子に対する言葉が初めて変わった叫びのシーン、普通なら改心し 本音が出たものだと思いたいところだが、彼女に限って それはないと思える。少しは後悔している部分もあるかもしれないが、この状況に限界を感じて出ただけの言葉だ。
自分のことしか愛せない親たちは、それぞれ希望どおりに生活を変えても、同じことの繰り返し、また不満を人のせいにするだろう、世間体だけを気にするだろう、親としての自覚はないだろう、引っかかるものを背負ったまま、表情のない彼ら。

寒々しいロシアの天候、寂しく揺れる木の枝、雪の降る中に残る貼り紙。
冷たい映像と 心を乱されるような不協和音が、不穏な空気と緊張感を助長している。
ラベル:映画 l N
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2018年04月07日

Eye on Juliet  「きみへの距離、1万キロ」

Eye on Juliet.jpg2017  

Director:

Kim Nguyen

これまでにない設定の映画。舞台は主に限られた2箇所で、しかも、主人公はほとんどのシーンを職場のデスクにて。
主人公ゴードンが恋人に振られて落ち込んでいる前置きを除くと、ストーリーも ここからここまでの短い1件について といったところ。
ゴードンが職務から逸れたことをする序章は、道に迷った目の見えない男性を案内したこと。ユーモアを交えた このシーンからも、この映画のテーマは、ゴードンの ❛運命の人はいるのか❜ の追求であることを示唆する。
ゴードンの行動はエスカレート。人助けも 職権濫用の域に。彼が心優しく、ロマンティストな一面を持っていることはわかるが、仕事中に感情で動き過ぎ、この仕事には向いていない。
ゴードンはアユーシャにとって救世主となったが、実際のところ、ロボットやSNSなどあたりまえの先進国とは真逆の 北アフリカの砂漠地帯には 彼女のような境遇の人は他にも大勢いるわけで、彼女ひとりを救っても 人道支援にはならないし、国のしきたりもある。
彼女を助けることは、ゴードンが自分の気持ちを正しいと思う方向へ示す、自分自身のためにやったことだともいえる。
これを機に、ゴードンは心を入れ替えたに違いない。会社も辞めざるを得ないだろうし、行動を起こしたわけだ。ここから先の未来はわからないけれど、これも運命的なエンディング。
..となると、ゴードンがアユーシャに恋心でもって支援したなら、ちょっと違ってくるかな。強引に彼女の苦境につけ込んだようで。
文化の違う国の問題も考えると簡単にはいかないこと、そのへん微妙だけれども、もともとはゴードンにそんなつもりはなかったはずで、単純に心のままに動く彼のことだから、真実の愛に突き進もうといている 気になる人を助けたかっただけ。
純愛ドラマというには疑問だが、おそらくこの映画は、固いこと言わずに、ピュアな運命の恋の話だと思って観たほうが つくり手の意図に合うようだ。
キューピット(?)の遠隔ロボットは、踏み潰せそうにも見えるが、結構な高性能だ。
ラベル:映画 E
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2018年04月06日

Wonderstruck

Wonderstruck.jpg2017  

Director:

Todd Haynes

子どもが主役の映画というのは、子どもの純粋な心が 胸に響きやすい。
子どもが主役といっても、子ども向けの映画とは違う。それぞれの生い立ちと置かれた状況は複雑で、彼らは自分の居場所を探している。
時代の違う2つのストーリーをつなぐ、そして不思議な運命に導かれる ❛ファンタジー❜ であり、子どもが独りで旅に出る 冒険❜ であり、1冊の本と いくつかの出会いによって謎が解かれていく ミステリー❜ でもある。

1927年のストーリーは モノクロと無音が醸し出す雰囲気あり、1977年のストーリーも セリフが少ない。しかし、子どもの心は読みやすい。

意外なところで、脇役の黒人の男の子ジェイミーの 子ども心にストレートな表現には、胸を打たれる。彼も2人と同じく、自分の居場所を求めているのだ。

真相解明の描写のし方も、ストーリーに即している上、子ども目線のファンタジーに調和している。
ローズ役の顔立ちの違いと、紛らわしくもある配役に、これは言われないとわからないな という真相だが、それでも、ファンタスティックな映画全体の印象と、つじつま合わせの納得により、文句なし。
おそらく子どものローズ役は、彼女である必要があったのだ。演技をしている子役とはちょっと違う印象が。子どもなのだから自然で良い。彼女が笑顔を見せたときの安堵感といったら..。

なぜベンのお母さんは ベンに聞かれても父親のことを話さなかったのか。ただ、今ではない いつか話そうと思っていて、不測の事態が起こっただけなのか。話していれば、ベンの気持ちも違っていたはず。しかし、知らなかったことは、ベンが自分の居場所を見つけるために行動する、2人を引き合わせる、きっかけにつながったのだ。

ユニークな構成による 壮大なストーリーの、優しい作品。

今回バックミュージックに こだわりを感じるが、トッド・ヘインズ監督といえば、「ベルベット・ゴールドマイン」。2016年日本公開の 繊細で美しい「キャロル」も良かった。
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ラベル:映画 w
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2018年04月02日

The Commuter  「トレイン・ミッション」

The Commuter.jpg2018  

Director:

Jaume Collet-Serra

リーアム・ニーソンは、‘陥れられた孤独な英雄’ の主人公役が多い。社会派映画のマーク・フェルト役よりも 彼らしさが引き立つ気がする、近年は。そう、過去に シンドラーやマイケル・コリンズも演じた彼だった。マーク・フェルト時に やけに痩せていることが気になったが、今回はそうでもなく、戻って 安心。

また あり得ない展開の話で。しかし、これがエンターテイメント。
犯人も こんな大がかりな罠を仕掛ける必要ある?他にやり方はあるでしょうに。
大、大、大活躍の主人公が元警察官だというのは、せめてもの信憑性。サラリーマンなのに、判断力あり、機転が利き、若者と格闘するわ、列車とも格闘するわ。これまで以上に ハードなアクションを見せている、リーアム・ニーソン。げっそり痩せている場合ではない、60過ぎているのだから。

さて、だいたい、目立つ俳優が脇役の出方を見せるのは 怪しいと思え。ただ、序盤で1つ ひっかけを。だから、明らかに怪しい者ではないほう。

アメリカ映画的ハッピーエンディングに終わらず、ちょっとしたオチがあるのはよかった。しかし、また通勤電車に乗るのもマヌケだ。彼女の存在を忘れかけた..くらいの役では、ヴェラ・ファーミガをうまく使えていない。

確かに ‘トレイン・ミッション’ だけれども、どうにかならないのか、この手の邦題。
各国映画賞戦線の洋画や、実話に基づく「ペンタゴン・ペーパーズ」を観た直後の この映画だと、土曜の夜のテレビ放映的な印象を受けるが、よいのです、本来 映画はこれで。リーアム・ニーソンも好きだし..。
ラベル:映画 C
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2018年04月01日

The Post  「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」

The Post.jpg2017  

Director:

Steven Spielberg

社会派映画も スティーヴン・スピルバーグにかかると、事実を忠実に追うだけではなく、拍車がかかっていくテンポよい展開、読み取りやすく 心を動かされる人物像、人間関係の描写を バランスよく構成することで、ストーリーに引き込んでいく。カメラワークによる効果にも気づく。

機密文書を掲載するということは、家業の存続、会社の存続と 全社員雇用の危機を伴い、懲役が科せられる可能性も高い。そこで キャサリンは大きな決断に迫られる。国家権力を敵に回してでも、真実を伝えること、読者、国民の利益を大切にすることが 新聞の最大の使命であるということ。
キャサリン・グラハムの決断は、彼女の家庭の内情を含む会社経営の背景を耳にしていれば、さらに深い。会社を継いだ亡き夫について、劇中 何度かさらっと触れてある。キャサリンを支える取締役のフリッツの存在は大きいらしく、彼女の決断に含まれたものがある。しかし、それにはフリッツとキャサリンの関係性を追究しなければならず、この映画では 編集主幹のベン・ブラッドリーとキャサリンに焦点を当てているため、決断のシーンは、この2人と周囲を交えての これで十分だと思える。

政府の圧力がかかる中、全米複数の新聞社が ワシントンポストに続いて次々と記事を掲載した、この1シーンも心揺さぶられる。キャサリンの決断が大きく影響し、国を動かしたわけだ。
判決が出るシーン1つにしても、意識を集中させ、込み上げるものがある。

安心、安定のメリル・ストリープとトム・ハンクスは、観ていて相性もよい。2人に限らず、組織と登場人物の相関は、バランスよく、わかりやすい。
アメリカンテレビドラマの「ブラザーズ&シスターズ」の印象の 
ウェールズの人、マシュー・リースを見かけるのも珍しいが、おもしろい重要な役どころ。

エンディングをウォーターゲート事件につなげるなんて、粋な計らいだ。無いのはわかっているが、続きを観たくなる。リーアム・ニーソン主演で、ウォーターゲート事件を題材にした映画が最近公開されたばかりなので、すぐにピンとくる。

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ラベル:映画 p
posted by JUNE at 13:00| Comment(0) | 映画コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする