去年ほどのクオリティーの高さを感じなかったものの、 全体的に心に残るタイトルが詰まっている。

絵コンテのような画に、主人公の語り、 彼の少年の頃からの夢を叶えて引退するまでをシンプルに綴ったも の。鉄拳の漫画に感動するようなタイプのもので、 誰も死ぬわけではないし、人との関わりはなく、 彼ひとりのストーリーなのに、なぜだろう、切なく、 爽やかな感動が。バスケットボールとの出会いと別れ。 メンタルは大丈夫だが、体がついていかなくなったと。 少年から成人になっていく、 バスケットボールを通して重なる彼の半生、心の投影。

---精神科に通う妄想性障害の患者は自分自身が精神科医だと信じきっていた。2人の精神科医が互いに診療しようとするからさあ大変。---
どちらかというと正統派コメディー、オチのある話。 精神科医と、精神科医だと妄想している患者。おもしろいが、 結末が予想できる。主人公のごとく初めに登場する、 いかにも医者らしい男、 この日に限ってセクレタリーが代理だということ~ 正規のセクレタリー、ドナについても予想できる~、 医者よりも患者らしく見える後から入ってきた男。 収拾がつかない。オチが読めても、テンポよく、 明解にさせるだけ良く、おもしろい。

---息子が父からスーツケースの詰め方を教わるというストーリーを通じて、親子の絆を描いた作品。---
アニメーション。 粘土の人形のような切ない表情のキャラクターや ころっとした小道具セットのデザインは 意外と見ていて飽きない。この短いストーリーに残されたもの、 最後のシーンに身動きがとれない感覚。アニメーションでも ここで選ばれるものは やはりひとつ違うのだ。デザインも影響しているが、 初めから寂しげだ。パッキングは父から教わったという、主人公。 幼いの頃のファンタジーなパッキング、その後、パッキングが得意になって、 父のパッキングを手伝うようになって、時が経っていく。 父が亡くなったとき、これではだめじゃないかって、 この時点では何を言っているのかわからなかった。 大きな箱に入っている父、隙間だらけだって。

---ジョージア州アトランタの学校襲撃時、実際に入った緊急電話に着想を得て作られた話。---
とりあげられるテーマに顕著に表れる、 現代を反映する1つ、銃乱射事件。居合わせた1人の女性の勇敢で冷静な行動と、 緊張が解けたときの彼女の胸の内。

---聾唖者の少女リビー。中産階級の彼女の家族は子どもが現実世界に生きていけるようその場しのぎの解決方法を探していた。しかし聴覚障害専門の社会福祉士を雇ったことにより、問題はリビー以外にあることが明らかになっていく。---
メッセージを込めて、ストーリーの決着はつけない。 胸が詰まった。幼いリビーと リビーの教師兼世話にやってきたジョアンナ、2人の演技がよい。 リビーはとてもかわいく、 演じている女の子は本当に聾唖ではないか? 家族がコミュニケーションをとろうとしない、静かなリビー。 ジョアンナが関わることでリビーの子どもらしい笑顔が見えるよう になったのは、観ていても うれしくなる。理解のない母。家庭の事情もあるようだ。 かわいそうな学校でのリビーと、為す術もないジョアンナ。 2人の柵越しの会話。不本意ながら、 社会に向けたメッセージに終わる。