2019年03月16日

Roma

Roma.jpg2018  Director: Alfonso Cuarón

確かに 商業的なハリウッド映画とは一線を画す。CGを使った映画とは違う、実写の美しさとリアルさを実感する。小規模作品とはいえ、引きの大画面映像で、そこに映し出される風景は 大きいスクリーンでその世界観を。
この自然の風景をカラーで観てもきれいだろうと、しかし 監督の幼い頃の記憶の一部であることを考えると、くすんだセピアがかったモノクロ映像が雰囲気を出している。
1970年代初頭、メキシコシティのローマ地区、中流家庭の家政婦として働くクレオの視点で 日常が描かれる。仕事の毎日に、雇い主の妻や子どもたちとのやりとり、離れで同居する同僚とのやりとり、プライベートの時間。クレオに、一家に 降りかかるつらい出来事。
子どもたちはクレオのことが大好き、一家の妻は家庭内トラブルのイラつきをクレオにぶつけることも、一家の祖母はクレオに手を貸すものの 彼女の家族のことも年齢すら知らない、そんな雇い主と家政婦という関係、目の前にある貧富の差。
海岸で人が重なり合っている この映画のポスター写真が意味することは大きかった。命がけで一家の子どもたちを守ること、クレオが言った本音、一家にとってのクレオの存在。複雑な環境の中、何かが変わった、絆が生まれた瞬間であった。
この映画は 登場人物が出てこないオープニングからエンディングの映像まで その自然な斬新さのアートが美しい。オープニングは タイル地に水が流れるだけの長いシーン、これはクレオの日常的な労働の一部であることがすぐにわかる。エンディングは 空を見上げる構図、建物の間に飛行機が飛んでいるのが見える、遠くで聞こえる子どもたちの声、クレオはきっと前を向き 新しい空を見上げただろう、穏やかな日常を取り戻したことを感じられる。
単調な日常を観ているようで、全く退屈しないのはなぜか。海外主要映画祭やアカデミー賞にまつわるネットフリックス議論と 変な話題に上ったこの映画だが、力強く、美しい映画であることは間違いなく、スクリーンで観るべきものだ。
ラベル:映画 R
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2019年03月15日

The Bookshop  「マイ・ブックショップ」

The Bookshop.jpg2017  Director: Isabel Coixet

舞台のイギリス、海辺の小さな町は美しく、エミリー・モーティマーもよいと思うが。テンポわるく、終わりもわるい。何もハッピーな要素の進歩がないもの。
町の人たちが主人公フローレンスのために手を貸すとか、家を奪おうとしている人を負かす逆転劇、いくらでもつくれるでしょうに。いまいちピンとこない人物だが ビル・ナイ演じる最大の理解者は急死し、不愉快な人たちは反省することもなく野放し、唯一少女が主人公を慕ったが、最後のいたずらが何だ、フローレンスにとっては意味がなく、彼女が追い出されて去って終わるなんて。原作あってのものだから しかたないのか?
ラベル:映画 b
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2019年03月12日

In den Gängen  「希望の灯り」

In den Gängen.jpg2018  Director: Thomas Stuber

クラシック音楽をバックに 人けのないスーパーマーケットを 滑らかに浮遊する感覚。夢の中のような。
しかし、違う角度から見れば、そこは 毎日繰り返される、労働という現実そのもの。巨大な倉庫型スーパー、それは 全く太陽光が入らない、広くも 閉ざされたスペース。
そんな中、主人公、新入りのクリスティアンの周囲の毎日顔を合わせる人のコミュニティ、指導する上司と新入りとのやりとり、休憩時の交流、ゆっくり時間が流れていく。
無口で タトゥーを隠し、時間に正確なクリスティアンについて、時間をかけて少し観えてくる、過去のことは断片だけ。
一見悩みなんてなそうな 人の良い上司ブルーノが 後にクリスティアンだけに見せる姿。
立派な家に住んでいながらスーパーで働く 家庭に訳ありの先輩スタッフ、マリオン。
日常的な当たり障りのない会話中心、真相はほとんど語られないが、各々が何か個人的な問題を抱え、このスーパーのシフトを毎日こなしている。
照明が落とされていくスーパー、水槽に詰め込まれた魚、クリスティアンがひとりバスを待つ停留所、ハイウェイ沿いの殺風景な郊外アパート、虚しく寂しげだ。
ルーティンワークの日常、日常のちょっとした変化、小さな幸せ。皮肉な悲しい出来事も。
全体的に、結末も はっきりさせないような映画。クリスティアンとマリオンの恋の行方もわからない。
それでも、クリスティアンの昇進と周囲の祝福、マリオンとの関係良好、みんなに笑顔が戻り、希望を感じられる。ささやかな温かさ。この映画の空気感、好きになる。ずっと観続けられそうだ。
クリスティアンは随分フォークリフトの運転がうまくなった。エンディングのふたりのやりとり、耳を澄まさせる、情緒のあるもの。
不釣り合いなようで、音楽も心地よい この映画。
原題の 'Gängen' は "通路" の複数形で "歩み" や "ギア" なども意味する。このスーパーの整然とした通路で生まれるもの、クリスティアンが、他のメンバーが 日々歩む道。もちろん比喩的にまとめると '希望の灯り' かもしれないが、原題はシンプルで深い。
ドイツ映画。
ラベル:映画 i
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2019年03月09日

Utøya 22. juli  「ウトヤ島、7月22日」

Utøya 22. juli.jpg2018  Director: Erik Poppe

人の目線でハンディーカメラが走る。もちろんバックミュージックは一切なし。隔離された島内で、何が起こっているのかわからない、鳴り響く銃声、悲鳴、逃げ惑う人たち、身を隠す場所もない、臨場感のある恐怖。
ただ、一箇所にとどまっている時間が長過ぎる。ひとりの女の子カヤをカメラが追っているため、無理もないかもしれないが。リアリティを追求しているから。
最後だけ、混乱したカヤからカメラが離れ、友人の男の子に移った。そういうこと?..
犯人は最後まで ちらりとも映らない。カヤが犯人を見ていないから。
ノルウェー連続テロ事件、衝撃的な事実をリアルに表現する、実験的な映画。こういう映画も珍しいからアリだが..。
ラベル:映画 U
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Das schweigende Klassenzimmer  「僕たちは希望という名の列車に乗った」

Das schweigende Klassenzimmer.jpg2018  Director: Lars Kraume

1950年代、 東西冷戦下の東ドイツ、18歳の高校生たち、クラス2分間の黙祷が  社会主義国家への反逆として 国家を敵に回すことになる。そして 迫られる人生の選択。
主要な学生たち各々のキャラクターと家族設定にも触れ、それぞれ存在感と魅力が引き立つ。当時の国家的な背景の中、家族との関係に悩む者、信念を貫く者、その時任せで嘘も方便な者も。彼らが下した決断は。
ドイツ東西のあまり映画化されることのない分野である興味深さ、政治的なストーリーにして、若者たちの心と行動を軸とする観やすさ、テンポよい展開。友情と希望、胸の奥に熱い感動が。
これは、密かに かなり見応えのある映画。
ラベル:映画 s
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