2019年03月12日

In den Gängen  「希望の灯り」

In den Gängen.jpg2018  Director: Thomas Stuber

クラシック音楽をバックに 人けのないスーパーマーケットを 滑らかに浮遊する感覚。夢の中のような。
しかし、違う角度から見れば、そこは 毎日繰り返される、労働という現実そのもの。巨大な倉庫型スーパー、それは 全く太陽光が入らない、広くも 閉ざされたスペース。
そんな中、主人公、新入りのクリスティアンの周囲の毎日顔を合わせる人のコミュニティ、指導する上司と新入りとのやりとり、休憩時の交流、ゆっくり時間が流れていく。
無口で タトゥーを隠し、時間に正確なクリスティアンについて、時間をかけて少し観えてくる、過去のことは断片だけ。
一見悩みなんてなそうな 人の良い上司ブルーノが 後にクリスティアンだけに見せる姿。
立派な家に住んでいながらスーパーで働く 家庭に訳ありの先輩スタッフ、マリオン。
日常的な当たり障りのない会話中心、真相はほとんど語られないが、各々が何か個人的な問題を抱え、このスーパーのシフトを毎日こなしている。
照明が落とされていくスーパー、水槽に詰め込まれた魚、クリスティアンがひとりバスを待つ停留所、ハイウェイ沿いの殺風景な郊外アパート、虚しく寂しげだ。
ルーティンワークの日常、日常のちょっとした変化、小さな幸せ。皮肉な悲しい出来事も。
全体的に、結末も はっきりさせないような映画。クリスティアンとマリオンの恋の行方もわからない。
それでも、クリスティアンの昇進と周囲の祝福、マリオンとの関係良好、みんなに笑顔が戻り、希望を感じられる。ささやかな温かさ。この映画の空気感、好きになる。ずっと観続けられそうだ。
クリスティアンは随分フォークリフトの運転がうまくなった。エンディングのふたりのやりとり、耳を澄まさせる、情緒のあるもの。
不釣り合いなようで、音楽も心地よい この映画。
原題の 'Gängen' は "通路" の複数形で "歩み" や "ギア" なども意味する。このスーパーの整然とした通路で生まれるもの、クリスティアンが、他のメンバーが 日々歩む道。もちろん比喩的にまとめると '希望の灯り' かもしれないが、原題はシンプルで深い。
ドイツ映画。
ラベル:映画 i
posted by JUNE at 23:00| Comment(0) | 映画コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする