2019 Director: James Mangold
フォード社の対フェラーリ社、そのビジネスと それにつながる製造、重要なレーシングドライバーと 関わる人物のストーリー。ビジネスの筋を背景に、2人の人物像、交流をメインに描くもので、切り取る事実や心情、展開がシンプルに伝わり、痛快なやりとりあり、それほど大袈裟ではなくドラマティックであり、ささやかに皮肉な感動もあり、まとまりのよい秀作。
マイルズがル・マンレースでフォード社の意向に従ったのは、シェルビーとの友情によるものだ。しかし、会社側は彼らを利用しただけで、普通映画では優勝し栄光とともに幕を閉じるだろうに、登場人物の一部とオーディエンスは 2人の関係を通じた無念さを感じとる。それでも2人の信頼関係は深まったはずで、家族も理解しているはずで、順調なはずのその先..。
マット・デイモンとクリスチャン・ベイルの組み合わせがマッチするかは不明であって、役柄も性質の違う2人で、しかし 言葉少ないながらもシェルビーとマイルズの友情を観るのは、さすが二大俳優、観応えある。
珍しくイギリス人役のクリスチャン・ベイルは The Fighter の時くらいの頬のこけ方だが、たまたま痩せていたわけではなさそうだ、エンディングのマイルズ本人の横顔写真と似ている。短気で自己流に生きるマイルズだが、的確な判断と情熱、才能のある男。Suburbicon ではマット・デイモンの息子役だった少年が今作ではクリスチャン・ベイルの息子役で、マイルズについては家族との温かいやりとりも描かれる。
いつも寡黙な印象のマット・デイモンも 元レーサーのシェルビー、公道で車をぶっ飛ばしてみたり、車会社の男風演出もあるが、マイルズに対する誠意を観せ、つらさを噛み締める姿には胸を打たれる。
ル・マンが24時間レースなだけに レースシーンも長く観せるが、スピード感、その臨場感ある映像。
ストーリーが展開するほどに、ビジネスの行方やレースの勝敗を観ながら、それよりも大切なテーマが心に響く。